2014年06月02日(月)
『山奥の小さなタクシー会社が届ける幸せのサービス』 [研修報告]
5月12日、TKC主催の生涯研修に行ってまいりました。
前半の講演は「税務業務と会社法」でした。専門的な内容なので詳細は割愛しますが、税務と会社法は切っても切れない関係にあります。例えば役員報酬や、役員に支払う地代家賃等の変更等の際には会社法の規定により株主総会や取締役会の議事録の作成が必要となっており、税務調査でもそういった形式が整っているか否かが争点になることがあります。
税務面だけを気にしていると、ついつい会社法上必要な処理を忘れがちですが、会社法は会社運営の基礎となる法律ですから、きちんと正確な知識を持たないといけないなと、身につまされる研修でした。
研修後半は長野県にある中央タクシー株式会社の宇都宮恒久社長による講演でした。厳しい競争で苦境にさらされるタクシー業界にあって、中央タクシーは非常に好調な業績を上げており、宇都宮社長はテレビ東京の「カンブリア宮殿」に出演されたり、中央タクシーを取り上げた書籍が出ていたりします。
講演では中央タクシーの好業績がいかにして実現されているかという内容でしたが、一言でいえば徹底的な顧客第一主義ということでした。中央タクシーがメディアで取り上げられる際に、必ず話題になるのは運転手の方がお客さんに対し行った素晴らしいサービスの逸話です。
財布を無くしたことに気付いたお客さんに、後で乗車場所まで戻って財布を探して届けたり、パスポートを忘れて空港に向かったお客さんに、別のタクシーがパスポートを持って追いかけて届けたり、長野の寒さを知らずにやってきたお客さんに暖かい靴下を上げたり等々、常識では考えられない顧客対応をされており、中央タクシーにはそういったサービスに感動したお客さんから、日々、お礼の手紙が届くそうです。
そして中央タクシーではこういった逸話の数々を「伝説」と称して、語り継ぐんだそうです。
タクシーというとお客さんを目的場所に届けるだけの、単調な業務ですが、中央タクシーではこれを「お客さんの人生に触れること」と定義することで、単調な作業に深い意味を持たせ、乗務員が自発的に良いサービスを届けたいという気持ちになるようにしていったそうです。
そしてこうした行動を支えるのに大事なのは社風だとのことでした。タクシーというのは個人主義的な仕事で、それぞれが個人事業主のように独立して仕事をしているので、社員間の交流はほとんどないのが普通で、人間関係は決して良好なものではない、というよりむしろ悪いんだそうです。しかし中央タクシーでは「みんなで盛り上げていこう」という雰囲気を作り出し、社内の人間関係をよくするよう努めたことで、社内の雰囲気が良くなり、従業員の定着率も高くなり、ひいてはそれがお客さんへのサービス向上にもつながりました。
とある乗務員の方などは退職の際に「こんなに長い間いるつもりじゃなかったけど、みんなと一緒に仕事をするのが楽しくて、この歳までやることになった」と言って、シフト制で出勤する他の乗務員全員に挨拶するまで毎日出勤して挨拶をされたそうです。
講演を聞いていて、こういう気持ちでお客さんに向かえて、また退職を迎えられたら幸せだろうなと思うような講演でした。皆さんもご興味のある方は、一度書籍をお読みいただくといいのではないでしょうか。
Posted by 上島会計 at 09時31分