上島会計事務所便り

名古屋の上島会計事務所から、お客様へのお知らせやスタッフが気がついたことをご案内しています。

2012年08月03日(金)

『雪月花の数学』 [研修報告]

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映像を駆使した講演

TKCの生涯研修に参加して参りました。
今回の研修は『雪月花の数学』というタイトルで、「数学と税金や会社経営と何か関係があるの?」という感じですが、実際、全く関係ありません。(笑)
講師は『たけしの誰でもピカソ』や『教科書に乗せたい!』等、テレビ番組にも多数出演されている東工大世界文明センターフェローの桜井進さん。桜井さんは幼少期から数学が大好きで、数学好きが高じて今では数学の面白さを伝える伝道師の仕事をされているというような方で、今回の講演も全編、いかに数学が面白くて素晴らしくて役に立つかということを熱弁されるというものでした。

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黄金比

今回の講演のタイトルは『雪月花の数学』ということで、日本人が古来から持つ美的感覚に潜む数学的秘密を暴くというものでした。
美術に活かされる数学というと黄金比が有名です。黄金比というのはフィボナッチ数列という数列(1、1、2、3、5、8、…というように隣り合う数字を足して次の数字を作る数列)の極限(無限に大きくなった時)の隣り合う数字の比である1:1.618…( ≒ 8 ÷ 5 )という比率のことで、この黄金比は古来ピラミッドやモナリザを代表とした西洋美術等、多くの美術、建築物に見られるほか、花、螺旋等、自然界にも見られる比で、最も美しく、世界を形作る比とも言われる比率です。

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俳句に見られる白銀比

一方、日本の絵画、建築等には白銀比という比が多数みられあるとのことでした。白銀比というのは私も初めて聞きましたが、これは正方形の一辺とその対角線に現れる1:1.4という比率です。
白銀比は身近なところではコピー用紙の縦横の比などに見られるとのことです。A4用紙は半分に折るとA5になり、A5を半分に折るとA6になるというように、無限に相似の形が現れてきますが、このコピー用紙の縦横の比率が白銀比なのだそうです。

日本の絵画、建築、工芸品にはこうした機能的な比率が多く現れ、更には俳句の5-7-5という韻の比率にも見られるとのことです。(7÷5=1.4)そして白銀比は現代においてもとなりのトトロやアンパンマン等、多数の人気キャラクターの縦横比に見られるそうです。

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関 孝和

そして白銀比の他に、関孝和という江戸時代の数学者の話もありました。
関孝和は数学的考え方を米俵の数え方や木の高さの図り方など、身近で実用的な場面で応用できるようにした人ということで有名ですが、実際には西洋の数学者達とほぼ同時期に円周率の計算や微分積分概念の導入など世界的に見ても先進的な領域に到達していたとのことで、日本数学史上最高の英雄とも称される人物だとのことでした。
そんな凄い数学者が日本にもいたというのは非常に驚きで、またちょっと誇らしいですね。

昨今、日本の子供たちの学力低下が危惧されており、中でも理系離れという言葉に象徴されるように、数学力の低下が目立っているようです。
資源の少ない日本はとにかく優れたモノを作って輸出をしないことには電気を作る燃料を買うことも出来ないわけですが、モノづくりにおいて数学というのは非常に大切です。車を作るにも材料開発や流体力学などでは当然数学が必要となりますし、最近ではゲームなどのコンテンツの制作やITビジネスにおいても高度な数学を必要とされます。数学力というのは国力を支える最重要分野と言っても過言ではありません。
今回の講演は「数学の面白さを伝える」というものではありましたが、その根底には桜井先生のそういった点への危機感があり、日本の将来を担う子供たちの育成に貢献したいという思いを強く感じました。
そのようなわけでこの桜井先生や、でんじろう先生なんかに影響されて日本の将来を背負って立つ凄い数学者がたくさん現れてくれるといいなと思った次第です。

Posted by 上島会計 at 09時33分   パーマリンク

2012年05月15日(火)

『日本財政のゆくえ』 [研修報告]

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『国家は破綻する』

TKC主催生涯研修のご報告です。今回は名古屋大学大学院経済学研究科教授小川光さんによる『日本財政のゆくえ』という講演でした。

日本財政と言えば1,000兆円超という想像もつかない大きさの財政赤字で、連日、その深刻さについて取りざたされています。以前であれば「国家の財政が破たんする」ということが想像も付かない非現実的なものに思われましたが、ギリシアの財政危機を目の当たりにして、現実に起こり得ることなんだという現実を突き付けられた思いです。
しかし、では果たして日本の財政は破たんするのか!?という疑問に対する回答は得ることが出来ません。今回の講演ではその疑問に対する最も「らしい」答えを聞くことが出来たように思います。


まず小川先生によればそもそも国家の破たんというものはこの近代200年で見ても平均して年1回以上起きており、何ら珍しいことでもないとのこと。そうした現実に起きた国家の破たんをアメリカのエコノミストが紐解いた『国家は破たんする』という本も発売されているとのことでした。
そういわれてみると確かについ10年ほど前にもアルゼンチンやロシアなどで債務不履行が起きたというニュースが世間を騒がせたことがあったことを思い出し、
国家破綻がそれほど珍しいことではないということが分かりました。

そして日本の財政は破たんするのか!?というと、ほぼ確実に破たんするというのが先生の認識だったように思います。
それは素人目に見ても疑いのないことのように思うわけですが、ただ破たんしないでやり続けていけるというのを楽観的シナリオ、国家の経済が壊滅的な打撃を受け、生活もままならなような状況となるのを悲観的シナリオだとすると、答えはその間に落ちるだろうとのこと。
我々は国が破たんするというと、まるで日本が世界地図から消えてしまう、世界の終りのようなイメージを持ってしまいますが、実際には上記のようにこれまでにも破たんした国家は多数ありながら、ではそれらの国々がどうなったかと言うと、決して世界から消えてしまったわけではなく、また他国に侵略されたわけでもなく、そこには変わらず生活している人たちがいます。(もちろん以前に比べれば生活は楽ではないでしょうが)

こう考えてみると、楽観、悲観の二元論的に物事を捉えないで、起こり得る現実を冷静に見据えるというのは非常に実務的だなと感じました。


ちなみに先生によると日本は過去、2度ほど財政危機を迎えたことがあるとのことでした。1度目は1900年代の日露戦争のとき、2度目は世界大戦の時。

このときも債務残高がGDP比で100、あるいは100を大きく超えたのですが、日本はこの2度の危機を乗り越えてきました。

ではどのようにして乗り越えてきたか。
先生によると債務残高が返済可能な水準に収束するには、3つしかないとのこと。その3つとは

 A インフレが起きる
 B 経済成長
 C 財政改善


で、日露戦争のときはAが4割、Bが3割、Cが3割とバランスよく貢献し、収束しました。一方世界大戦の時にはA、年率200%もの凄まじいインフレによってのみ終息したとのこと。インフレが起きて債務が収束するとはつまり1,000兆円という債務も今の貨幣価値が1,000分の1になってしまえば、
実質1兆円になるということです。
そして今回の債務危機は過去2度の債務危機を上回る水準で、また現在の財政状況等を踏まえると、Aによる収束以外には考えにくいということでした。
従って遠からず財政危機が発生した暁には、急激なインフレが発生する可能性が高いということで、それにより我々の生活水準の低下も避けられないだろうと思われます。

ただ、上でも述べたようにそうなったからといって日本という国が消滅するわけではありませんし、また過去の国家破綻の例を紐解いても10年前後というスケールである程度状況は収束するとのことですから、悲観しすぎる必要はないだろうと思います。

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内閣府の世代会計グラフ

今回の講演でもう一つ、大変興味深かったのは、財政的な世代間格差の話です。

先生によると今の財政赤字、そして現制度による将来の財政負担による利益の多くは上の世代の人たちによって享受されており、若い世代はそのつけ回しを受けているとのこと。

我々が生涯支払う税金等の負担と、逆に国家から受ける受益を比べた時に、負担と受益のどちらが多いか、その世代間格差を問題にした『世代会計』という学問領域が最近注目を浴びているそうで、つい先日もイギリスの例を取り上げた記事が日経に出ていました。

さて、この世代間格差ですが日本では55歳以上の人たちは受益が超過しているものの、それ以下の世代では全ての世代で負担が超過しており、負担のピークは現在の30代前後で、2500万円超の負担超過とのこと。またこれから生まれてくる子供たちも1680万円の負担超過ということで、彼らは生まれながらにして既に1680万円の借金を背負わされているということだそうです。(内閣府作成のグラフを載せておきましたが、こちらは1999年ベースの上に、先生の資料と出典が異なるため、数字に違いはありますが、傾向としてはほぼ同様のことば読み取れます)

そしてこの世代間格差を世界的に見た時、日本は突出して大きく、若い世代に負担を付け回している状態を称して、「日本は財政的幼児虐待が最も酷い」と言われているそうです。


最近よく言われるような、生まれた時から豊かな国に生まれたせいで若い世代はハングリーさに欠け、そのせいで世界的な競争で遅れを取りつつあるという批判はもっともだと思いますが、その一方でこのような話を聞くと、「あなた方、上の世代も利益を先食いしてそのツケを若い世代に回してるじゃないですか」と言いたくもなります。(笑)


しかしそんな犯人捜しをしたところで何の意味もありませんね。我々がやらなければならないことは将来の世代に負担を残さないよう、そして若い世代に夢を与えられるような、そんな日本にすることなのかなと、そんなことを思ったりした次第です。
(もちろん世代間格差を是正するような制度改正は行うべきでしょうが)


そんなわけで今回はちょっと難しい内容ではありましたが、マクロ的に日本の置かれた状況を分かりやすく捉えることのできた、非常に興味深い研修でした。


Posted by 上島会計 at 16時52分   パーマリンク

2012年03月30日(金)

『ドラッカーの経営学に学ぶ 経営者の仕事とは』 [研修報告]

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藤屋さんの著書

2月に行われたTKC生涯研修の研修報告です。今回は少し長くなりそうなので、午前の部と午後の部に分けて感想を書きたいと思います。
午前の部は藤屋マネジメント研究所の藤屋伸二さんによる『ドラッカーの経営学に学ぶ 経営者の仕事とは』でした。

いま流行のドラッカーの話ということで楽しみに行ったのですが、ちょっとした経営指南の本ならどこにでも載ってるような話が中心だったので(セグメンテーションやポジショニングが大事ですよとか)、ちょっと残念。

ですので、ここでは個人的に心に留めておきたいなと思った言葉を、いくつかご紹介するとします。
(ただセミナーで聞いてメモっただけの言葉なので、ドラッカーの真意がそうかどうかはわかりません(笑))

「当たり前のことなど何一つない」
過去そうだったから、とか自分はそう思っているということが、果たして本当に正しいことなのか?
物事を考えるときには常に現状認識が正しいのかどうかの再確認から始めるべきだ。


「既に起こった未来を探せ」
山の上で雨が降ると数時間後には下流の水かさが増えるように、
どこかで起きたことが将来、どんな形で影響を及ぼすのか、
そうした将来への影響の端緒を探すことが不足のリスク回避、
未来の市場の発見につながる。


「変化が秩序」
企業は過去の成功体験に甘んじ、変化を恐れる傾向がある。
しかし状況は常に変化しているのだから、企業も常に変化を続けなければならない。
リスクには「負わざるを得ないリスク」「負えるリスク」
「負ってはいけないリスク」「負わないリスク」の4つがあるが、
変化の激しい状況においては「負わないリスク」が最大のリスクとなる。


講師の藤屋さんは「もしドラ」が売れた時に「これこそが『既に起こった未来』だ!」と思って、
ドラッカーの入門書をいくつも書いて、実際にそれでものすごく売れたそうです。

より詳しく知りたいという方は是非お読みになってみてはいかがでしょうか。



Posted by 上島会計 at 18時40分   パーマリンク

2012年01月16日(月)

『新・日本型ビジネスモデル 9割をリピーターにする方法』 [研修報告]

今回の研修はフォーデイズ株式会社代表取締役社長 和田佳子さんの
『新・日本型ビジネスモデル 9割をリピーターにする方法』でした。

フォーデイズというのは核酸栄養ドリンクという商品を販売するネットワークビジネスの会社で、
この一つの商品だけを武器に300億円を売り上げているということでした。

今回、『新・日本型ビジネスモデル 9割をリピーターにする方法』ということで、
昨今売上の低迷、減少に苦しんでおられる関与先様のためにも
何かヒントになるような有意義な話が聞けるかと期待しておりましたが、
内容としては「自分が本当にいいと思うものを売るのが大事」ということを
延々繰り返しただけで少々残念な内容でした。

しかしこの極めて当たり前とも思える「自分が本当にいいと思うものを売る」ということが
実際、なかなか出来ていないというのもまた事実のように思います。

皆さんの中にも目先の利益を追うがゆえに、つい納得がいっていないモノ・サービスを
お客様に販売してしまっている方はいらっしゃいませんでしょうか?

それで目先の利益を得ることが出来ても、そのお客様から生涯に渡って
得ることが出来たはずの利益を損なってしまっているかもしれません。

今一度真摯に自社のサービス、お客様と向き合うには
素朴ながら良い思想のように思います。



午後の部は『税理士のための紛争予防税法学−注目最高裁判決を素材に』というテーマで
専修大学法学部教授増田秀敏先生による講義が行われました。
内容としては税務判決の最近のトレンドを解説するというものでした。

租税訴訟というと一昔前はまず間違いなく
納税者側が敗訴するというのが当たり前だったそうなのですが、
昨今では勝率が徐々に上がってきて10%を超えるような勢いだということです。

その背景には昨今の判決が「租税法律主義」を
より重視してきているということがあるとのことでした。

「租税法律主義」というのは税金は法律に基づいて課されなければならず、
法律に記述がないのに課税庁の恣意的な判断で課税をしてはならないという考え方です。

当たり前といえば当たり前なのですが、しかし日本ではこれが当たり前ではなく、
これまでは法律の拡大解釈ともいえるような解釈で納税者側が敗訴してきたわけですが、
これが最近の判決では大きく変わってきたということです。

何故今頃になって「租税法律主義」をより重視するようになってきたのか?
ということについての明確な回答はありませんでしたが、
課税に関して今までよりもより明確な線引きがなされるということで、
納税者側にとっては歓迎すべきトレンドですね。

我々としても法律要件をきちんと押さえた対応の必要性を感じた研修でした。


Posted by 上島会計 at 18時57分   パーマリンク

2011年11月25日(金)

秋季大学2011 レポート3 [研修報告]

次に森下のレポートです。



秋季大学のテーマは「急げ!経営再点検」。ということで、私は「企業経営再点検」というテーマで話し合われたパネルディスカッションを中心にまとめてみました。

パネルディスカッションは、企業、金融機関、会計事務所の3つの視点からの検証ということで、それぞれを代表して1名ずつ参加されていました。
その中で中小企業に必要なことは、会社の現状を知るということ。パネルディスカッションでは、月次の決算書を作成し、現状を知るということが大事だという話でした。
そのための方法として、TKCのシステムを活用するということでした。TKCのシステムを使い、日々の動きを入力していく。そうすることで、わかりやすく現状を把握できるとのこと。
また、それを利用し、会計事務所による月次巡回監査により、月次の決算書を作成する。そうすることで、企業の社長さんは現状を逐次把握することができるということでした。
そして、現状を知ることで次に何をすべきか。未来を予測することです。未来を予測し、会社が今後何をすべきかを考えることが大事だということです。

このような話から、現状を把握し、未来を予測することはとても重要だということがわかります。その方法は、上記のような方法もあるとは思います。しかし、上島会計では、上記のような方法を取らなくても、社長さんとの話を聞くことで現状を把握し、未来を予測する力を身につけることが必要だという話をされました。我々新人にはまだまだそのような力は無いかもしれませんが、いずれはそのような力を身につけ、即座にお客様の力になれるようになりたいものです。

中小企業の社長さんは皆さん、日々の仕事に追われ大変お忙しいこととは思います。そうした中では、このような経営分析を疎かにしてしまうこともあるかもしれません。しかし、この不況の中、中小企業がこれから生き残っていくためには、現状の把握、そして未来を予測し、今後の方針を考えることは大切だと思います。皆さんも、我々、会計事務所職員と共に経営分析をし、この不況を乗り切る未来を考えていきましょう。

Posted by 上島会計 at 23時22分   パーマリンク

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