2011年09月29日(木)
『個人も会社も成長するワークライフバランス』 [研修報告]
先日TKC主催の研修に行ってきましたので、今回はそのご報告です。
午前中は東レ経営研究所 佐々木常夫社長による『個人も会社も成長するワークライフバランス』という講演でした。
佐々木さんは東レで取締役を務め、近年の好業績の立役者の一人として活躍されたのち、現在は東レ経営研究所社長を務められている方で、ワークライフバランスをテーマにガイアの夜明けにもご出演されたことのある方です。
講演の冒頭は佐々木さんのご家族の話が中心で、ご長男が自閉症、奥さんが鬱病で自殺未遂を何度もされているという、ショッキングな家庭環境の話でした。
講演のタイトルもワークライフバランスということで、この後も家庭と仕事をどう両立させるか、仕事人間になり過ぎず、適度なバランスを保って幸せな人生を送りましょうというような話になるのかな?と思いながら聞いていたのですが、しかし家族の話は冒頭のショッキングな話だけで、その後の内容は想像していたものとは全く違うものでした。
講演のメインとなる内容は「どのように仕事をしたら効率的か?」というもので、そこだけ聞いていると、そのことと講演のテーマであるワークライフバランスと、何の関係があるの?というような話でしたが、佐々木さんがそのような話をされることの根底には「ワークとライフを両立させるためには仕事の仕方を圧倒的に改善・効率化して、ライフに割くための時間を作り出すことが必要」という確固たる考えがあるからのように思いました。
仕事の効率化の話については、レジュメからいくつか箇条書きで挙げると
・仕事の計画策定は仕事を半減させる
・仕事の品質基準を決め、過剰品質を排除せよ
・稚拙な創造をするより、過去の成果物を活用せよ
・いかにやらないで済ますかを考えろ
・出ない、会わない、読まない
といったようなものがあり、その冷徹なまでの仕事への効率的な取り組み方は、大変参考になりました。
このあたりの詳しい内容については佐々木さんの著書『部下を定時に帰す仕事術』(発行部数10万部の人気書のようです)に載っているようですので、気になられた方はご一読下さい。
ワークライフバランスというと世間では「ワークもほどほど、ライフもほどほどにしてバランスよくやりましょう」といったように捉えられているように思いますが、佐々木さんの「私はどちらもほどほどなんて言わない。仕事も生活も全力でやってきた」という言葉が非常に印象的な講演でした。
そしてもう一つの講演は森田辰彦弁護士による『租税回避に関する判例の流れ』ですが、こちらは非常に専門的な内容なので、ごく簡単に。
中小企業でよく問題になる同族会社の行為計算否認という規定がありますが、この規定が税法に最初に登場したのは大正12年だそうなのです。当時は「租税回避」と「脱税」が同一視され、合法的な節税行為も脱税と見做されることが多かったのが、現在では「租税回避」は課税要件を満たさないように行われた行為であり、明確な違法行為である「脱税」とは異なるという解釈となっています。
しかし租税回避が合法的であるとはいえ、ケースバイケースで否認されることもあるとのことで、講演ではその判決の推移を見ていきました。
内容としては国内の中小企業だけに関わる話のような気もしますが、租税法律主義(税金は必ず法律に基づかなければならないとする原則です)を掲げながらも、明文規定がないのに課税されることの多い日本の税環境は、外国企業にとって「ビジネスのコスト計算がしにくい国」として、投資をためらう要因の一つになっているとのことで、こんなことがいまの日本経済の低迷の一因にもなっているんだということが、意外な講演内容でした。
Posted by 上島会計 at 13時43分